肥塚 崇男(山口大学)
「植物香気成分の生合成分子機構の解明と代謝改変に関する研究」
植物は多様な香気成分を巧みに使い分け、周りの生物との相互作用を可能にしている。本研究では、揮発性のオキシリピンやベンゼノイドの生合成に関わる酵素の機能解析を通して、植物が進化の過程でいつ頃から香気成分生成能を獲得し、生合成酵素をどのように機能進化させたのかを明らかにするとともに、植物の潜在的代謝能力を利用したベンゼノイド香気成分の生産研究についても進めてきた。
七里 吉彦(森林研究・整備機構)
「難培養植物の形質転換系およびゲノム編集系の開発」
植物の形質転換技術は、基礎研究と共に品種改良にも利用されてきた。革新的なゲノム編集技術CRISPR/Cas9システムの登場により、形質転換技術の重要性はこれまで以上に高まっている。しかし、形質転換が困難な植物種は未だに数多いのが現状である。受賞者はこれまでに、社会的に重要な植物に適用できる形質転換技術、およびゲノム編集技術の開発に成功してきた。本成果は植物科学の発展および植物分子育種の双方に貢献するものである。
横井 彩子(農業・食品産業技術総合研究機構)
「相同組換えやトランスポゾンを活用した新規植物ゲノム工学手法の開発」
ゲノム編集技術の一つであるCRISPR/Cas9を用いた標的変異技術は、様々な作物種で利用されているが、栄養繁殖性植物などへの適用には人工制限酵素のデリバリー法の確立など課題が残されている。一方、相同組換えを介したジーンターゲッティング(GT)技術は未だ効率が低く、その効率を顕著に向上させる必要がある。本研究では、人工制限酵素発現カセットの新規デリバリー法と汎用的なGT系の確立を目指した研究に取り組んだ。