SEMINAR 市民公開シンポジウム

遺伝子組み換え植物 -科学的な視点から-

市民と高校生のための公開シンポジウム

テーマ:「遺伝子組み換え植物 -科学的な視点から-」
日時 :2000年7月23日(日)13:00~16:40(12:00開場)
場所 :静岡県立大学小講堂
    〒422-8526 静岡市谷田52-1
対象 :一般市民の方、高校生など
参加費:無料
主催 :日本植物細胞分子生物学会/同・静岡大会準備委員会

<プログラム>
  総合司会 斉藤 和季
   13:00-13:10  開会の挨拶
               内宮 博文(日本植物細胞分子生物学会 会長)

  座長 野口 博司
   13:10-13:50  遺伝子組み換え植物とは?
               佐野 浩(奈良先端科学技術大学院大学 教授)
   13:50-14:30  遺伝子組み換え植物の安全性評価
               日野 明寛(農林水産省 食品総合研究所 室長)
   14:30-14:50  休憩

  座長 森川 弘道
   14:50-15:30  遺伝子組み換えでどんな花ができる?
               田中 良和((株)サントリー 基礎研究所 主席研究員)
   15:30-16:10  社会における遺伝子組み換え植物
               宮田 満(日経BP社 医療局バイオセンター長)
   16:10-16:40  パネルディスカッション
               コーディネーター 柴田 大輔

   16:40     閉会

遺伝子組み換え植物とは?

佐野 浩(奈良先端科学技術大学院大学 教授)

 いわゆる「遺伝子組換え食品」が登場して数年になる。日本にもダイズ、トウモロコシなどの輸入が1998年から始まった。加工食品の原料になるだけに、安全性にたいする疑問が数多く提示された。問題点は二つに分けられる。第一は食品としての安全性、第二は生態系への影響。しかし、大方の関心は食品に集中している。その不安感は圧倒的な情報不足に起因する。マスコミで大きく報道されるわりには、情報に偏りがあり、一般市民の恐怖心をあおるような内容になった。正しい科学知識に基づいた冷静な議論のためには、正確な情報の提供が基本になる。それが意外に思うほど行き渡っていない。そこで、本講演ではできるだけ公正な科学的立場から遺伝子組換え植物を検証する。さらに、21世紀の持続可能な社会の構築のためには、遺伝子組換えは必須の技術になるだろうことも述べておきたい。

遺伝子組み換え植物の安全性評価

日野 明寛(農林水産省 食品総合研究所 室長)

1 遺伝子組換え技術の目的

遺伝子組換え技術を怖れる必要はあるのか、これまでの品種改良技術と何が違って何が同じなのか
 (1)なぜ、遺伝子組換え技術を使うのか
 (2)組換え技術に対する「種の壁を超えるので怖い」という見方は正しいか
 (3)私たちは、すでに遺伝子を組み換えたり、新しい生物を作って食べている
 (4)従来の品種改良と比べて同じことと新しいこと

2 遺伝子組換え技術の安全性

遺伝子組換え食品は危ないと思われているが、食品の安全性の考え方、遺伝子組換え食品の安全性について
 (1)実は、ほとんどの食品は「安全」とは言い難い
 (2)私たちは、毎日、異生物の遺伝子をいっぱい食べている
 (3)従来の品種改良と遺伝子組換え-方法は違っても、安全性は同等
 (4)国が定めた安全性評価システムで29種類の安全性が確認
 (5)組換え作物のベネフィット-”農家の負担を減らす”役割に目を向けては?

3 日本の食料事情と組換え技術

増え続ける人口問題と、耕作地の減少、環境破壊などの問題に対応するためにはどうすべきか
 (1)世界人口は増加し、あと数十年で我が国でも食料不足が起きる
 (2)我が国は農産物すべてを自給することはできない。だとすれば……

4 遺伝子組換え技術の今後

ベネフィットとリスクを正しく理解し、どう受け入れるかが今後の課題に
 (1)「組換え体を含んでいない」「不分別に使用」など、組換え体使用の表示を義務化
 (2)消費者とのコミュニケーションが必要

遺伝子組換えでどんな花ができる?

田中 良和((株)サントリー 基礎研究所 主席研究員)

 万葉集にも花を詠んだ歌が多いことからもわかりますように、私たちは花を古くから楽しんできました。現在市販されております花の多くは、おもに野生種(原種)の交配の繰り返しや突然変異の集積によって育種されてきました。こういった育種には、1.利用できる遺伝資源が交配可能な近縁種のものに限定されること(たとえば、ペチュニアとカーネーションは交配できない)、2.特定の形質だけ(たとえば、花色だけ)を狙って改良することが困難なことの2つの欠点があります。最近開発された遺伝子組換えによる育種を利用しますと、1.種を越えた遺伝子源の利用が可能であること(どんな生物の遺伝子でも利用できる)、2.目的の形質だけを特異的に改変できること、の2つの利点があります。
 サントリーでは、皆さんに愛される花を交配で育種してきました。また、遺伝子組換え技術を利用して作った自然にはない色(紫色)のカーネーションを市販しています。植物分子生物学のおかげで、花の形、香り、開花のしくみなどが分子レベルで理解できるようになりました。これらの知見を取り入れ、交配と遺伝子組換えの技術をうまく融合させることにより、もっと楽しめる花を作れると期待しています。

バイオ食品7つの幻想

宮田 満(日経BP社 医療局バイオセンター長)

1.食品にはリスクがない
2.農産物はスーパーの裏で採れる。
  (消費者と農業現場の断絶)
3.遺伝子組換えは難しい
  (子供は皆、新規の組換え体)
4.遺伝子組換え自体を検定できる
  (導入遺伝子が分からないと検出できない)
5.政府に任せれば何もかも安心だ
  (そんなことは絶対ない、AIDS薬害事件、長銀問題など多数)
6.正しい情報は与えられる
  (自ら努力しないと情報は得られない)
7.人間は合理的に行動する
  (自分の胸に手を当てて考えていただきたい)

お問い合わせ先

〒263-8522
千葉市稲毛区弥生町1-33
千葉大学薬学部内
Fax:(043)290-2905
E-mail:ksaito@p.chiba-u.ac.jp

または

〒422-8526
静岡市谷田52-1
静岡県立大学薬学部内
準備委員長 野口博司
Fax:(054)264-5663
E-mail:noguchi@ys7.u-shizuoka-ken.ac.jp